鷲羽岳・水晶岳・黒部五郎岳

1999年 8月13〜16日 歩行時間 1日目 約 8時間30分
       2日目 約 6時間30分
       3日目 約 7時間
       4日目 約 6時間
新穂高温泉  →  わさび平 → 秩父沢  →  分岐  →  鏡平  →  双六山荘  →  三俣幕営地 
  7:25          8:30    9:40/10:00    11:00    11:50/12:10  14:00/14:20     16:50
三俣幕営地 →  鷲羽岳  → 水晶小屋 →  水晶岳  → 水晶小屋 →  祖父岳  → 三俣幕営地
  5:25
     6:20/6:30    7:30     8:30/9:00    9:30    10:45/11:20    13:30
三俣幕営地 → 黒部五郎小屋 → 黒部五郎岳 → 黒部五郎小屋 → 三俣幕営地
  5:30     7:00/7:15     9:00/9:20    11:00/11:15     13:20   
三俣幕営地 →  双六小屋  →  鏡平  →  わさび平  →  新穂高温泉
  6:00      7:30/7:40    9:15      11:10        12:15  



●新穂高温泉から小池新道を登る
  98年のオリンピックのおかげで、長野県の道路は格段に便利になった。松本から新穂高温泉に抜けるルートにも、阿房トンネルが開通し、飛騨側の北アルプスが随分近くなった。このルートで新穂高温泉まで車で入り、三俣から「鷲羽岳」「水晶岳」「黒部五郎岳」の峰々に登ることにした。
  東京の出発時間が遅れたこともあって、新穂高温泉に着いたのは朝7時過ぎになってしまった為、温泉手前の無料駐車場は諦め、温泉奥の有料駐車場に停める事にする。装備を固め出発できたのは7時25分、予定より1時間遅れだ。林道を行く登山者を次々追い越していく。挨拶を交わし今日の泊る場所を聞くと「双六」の人が殆どだった。三俣を目指す人は、もっと早くに出発している様だ。

ワサビ平手前の笠新道入口
  笠新道分岐点で水を補給し、わさび平を越え林道を歩くこと1時間半、漸く登山道に入った。白い小岩のガレた片斜面を横断すると、小池新道の始まりである。道はしっかりしているが、黒土がぬんるんで滑りやすい。一汗かいた頃に秩父沢出会いに到着、小休止する事にした。秩父沢から鏡平までは約2時間の登りであるが、所々に冷風が噴出している場所がある。凍土でもあるのか、雪渓をそよぐ様な冷風が気持いい。所々に水溜りが現れるようになると、程なく鏡平に到着である。鏡平は、左俣谷を挟んで「槍・穂高連峰」の絶好の展望地になっているが、この日は濃いガスに覆われて期待した展望を得る事は出来なかった。

●雨の中、三俣を目指す
  鏡平で昼飯を食べていると、ポツポツと雨が降りだして来た。「予報は悪くなかったのに」と思いながら、大急ぎで荷物をまとめて出発する。鏡平から約1時間で稜線部に着いたが、その頃には降ったり止んだりの小雨が、本格的な雨になり始めていた。手早く雨具を着用し、双六小屋への道を急ぐ。
  本降りの雨の中、双六小屋に着いた時には14時になっていた。同じ頃に新穂高から到着した登山者は、殆どここで宿泊の様だ。三俣まで後2時間。雨の中歩くのは気が重い。ただここで幕営すると、明日からの行程がしんどくなる。意を決して、三俣への道を進むことにした。少しでも楽な巻道を選択したが、湯俣川源流部のアップダウンは相当なもので、結構、距離感のある行程であった。そして5時少し前に、漸く三俣山荘に到着する。雨の中、手早くテントを設営して中に潜り込んだ。 
三俣蓮華岳

三俣山荘前から
朝日に包まれる槍ヶ岳
●鷲羽岳を経由して水晶岳へ
  翌朝は、素晴らしい天気になった。三俣山荘の広場からは、朝日に包まれた槍ヶ岳が美しい。三脚を立ててカメラを構えている人が何人もいた。左手を見上げると、すぐ近くに鷲羽岳がそびえている。今日の行程は、鷲羽の頂きを踏んで水晶岳まで行って戻ってこようと言うものだ。テントは張りっぱなし、軽装で歩ける。昨日、少々無理をして三俣まで歩いたかいがあった。三俣山荘前からハイ松帯を抜け、岩稜帯を登ること約1時間、鷲羽岳の山頂に立つ。

鷲羽岳

鷲羽岳山頂
  鷲羽岳の頂からは、素晴らしい山岳パノラマが広がっていた。槍穂高連峰、大天井から燕に至る表銀座の稜線、稜線の先にある水晶岳、雲ノ平を挟んで薬師岳、そしてカールの美しい黒部五郎岳。何時まで眺めていても見飽きない。本当にアルプスのど真中に居ることを実感出来る頂だ。
鷲羽岳より水晶岳を望む
  鷲羽岳で北アルプスの展望を満喫した後、水晶岳を目指して歩き進む事にする。途中のワリモ乗越周辺は、高山植物が美しいかった。広々とした乗越を過ぎた処にある水晶小屋で小休止した後、のんびりとした稜線をたどって水晶岳を目指す。水晶岳は、別名「黒岳」とも呼ばれているが、なるほど周辺の山に比べて黒く見える。特に稜線の手前に位置する赤岳が、茶褐色の山肌をしているだけに、よけいに山肌が黒く見える。鷲羽岳から約2時間、かつて深田久弥が「大ていの山は、平野か耕地か何か人臭いものを見出すが、黒岳からの眺めはまったくそれを絶っている。四週すべて山である。」と言った、水晶岳(黒岳)の山頂に到達した。成る程まわりを見渡しても山しか見えない山頂だ。
水晶岳山頂

祖父岳から望む水晶岳
●祖父岳を経由し三俣へ戻る
  水晶岳から「岩苔乗越」迄戻って時計を見ると、まだ10時を少し過ぎたところだった。雲ノ平までは無理でも、少しでも近くから雲ノ平の匂いを嗅いでこようと、祖父岳を経由して帰ることにした。祖父岳は、鷲羽から水晶へ至る稜線から雲ノ平のほうに少し離れたところに位置し、黒部源流域の山並みを一望するには良いポジションにある。山頂は平で広々としており、休むのに丁度良い。ここで山岳展望を楽しみながら、のんびりと昼食を取ることにした。ビールを飲みながらの、山座同定は実に楽しい。

祖父岳から雲の平

祖父岳から日本庭園付近を望む
 祖父岳からは、一旦、雲ノ平方面に下降してから、ハイ松帯を回り込み、高山植物の美しい「日本庭園」を経由して、テントがある三俣を目指すことになる。ところが黒部源流に向かって、急な坂を下り始めた頃から、雨が降り始めた。昨日の天気もあって、14時頃からは雨の確立が高くなると予測していたが、予想より1時間早く降りだした。濡れた下草で、ズボンが水気を帯びてくる。たまらず雨具を着用した。三俣に張ったテントに戻ったのは13時30分。雨は14時頃からとの予想は甘かった。
●黒部五郎岳を往復
  3日目は朝から天候がすぐれない。今にも泣き出しそうな空に、踏ん張りを期待しつつ、黒部五郎岳を往復する事にした。三俣から黒部五郎小屋への道は比較的なだらかな部分が多く、天候も気になって飛ばして歩く。今日は心なしか、人が少ない様だ。皆、停滞を決め込んでいるのであろうか。と、黒部五郎小屋への下りに差し掛かった頃、小屋から上がってくる大勢の人とすれ違う様になった。こんな天気のすぐれない日には、コースは違っていても、人の顔を見るとほっとする。黒部五郎小屋で一休みした後、五郎カール経由で「黒部五郎岳」を目指すことにした。

黒部五郎岳
  カールにに取り付いた辺りで、水場を求めて下降してくる人と出会う。薬師までの縦走で水が不安になり、カールの手前に合った沢筋まで汲みに戻ると言う。確かカール奥に水場があったが...と思いつつも確信が持てずすれ違う。果たしてカールの奥、稜線への登りの手前に良い水場があった。カール壁の急登を上り切り、稜線を歩くこと僅かで「黒部五郎岳」山頂にたどり着いた。昨日とは打って変わった曇り空で、20〜30mほどしか視界が無い。展望は全く無かったが、北アルプス核心部の「鷲羽岳」「水晶岳」「黒部五郎岳」の三座を登り終えたという、満足感に浸りながら飲んだ熱いコーヒーがとても美味しかった。雨交じりとなった天気に急かされて、三俣幕営地への帰路につく事にした。
ガスに包まれた黒部五郎山頂
●あのぐらいの雨で幸運だった..? 
  4日目、早々にテントをたたんで帰途に付き、昼過ぎには新穂高温泉に下山した。天気がよければ、笠ヶ岳に登ろうと思っていたが、台風接近の情報もあり、諦めて下山したのである。新穂高にたどり着いて程なく、土砂降りの雨が落ちてきた。丁度この日、太平洋側は大雨で、上信越道の路盤流失や、丹沢玄倉川での水難事故が発生した事を知ったのは、帰途に付いた車の中であった。台風のコースが少し違っていたら、自分も停滞を余儀なくされていただろう。予備日・予備食料は充分持参していたとは言え、暴風雨を受けてはテントはひとたまりも無い。してみると、北アルプスの核心部まで入っていながら、停滞することも無く無事に下山できたのは幸運だったのかもしれない。
 ○ 三俣幕営山行のレシピ
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