千枚岳・悪沢岳・赤石岳

1995年8月11日〜15日 歩行時間 (1日目) 約 6時間
       (2日目) 約 6時間30分
       (3日目) 約 8時間
       (4日目) 約 6時間30分
       (5日目) 約 5時間30分
(1日目)内河内川登山口 → 転付峠 → 二軒小屋  (テントサイトで幕営)  
(2日目)二軒小屋 → 万斧沢の頭 → 千枚岳分岐 → 千枚小屋 (テントサイトで幕営)
(3日目)千枚小屋 → 千枚岳 → 悪沢岳 → 中岳 → 荒川小屋 → 大聖寺平 → 赤石岳 (避難小屋泊)
(4日目)赤石岳 → 赤石小屋 → 椹島 → 二軒小屋
(5日目)二軒小屋 → 転付峠 → 内河内川登山口



転付峠を越えて南アルプスへ入山
  南アルプスの中でひときは奥深く、その頂きが遠い山。赤石岳はそんな山である。南アルプス北部の盟主が北岳だとすれば、南のそれは赤石岳と言っていいだろう。赤石への一般的なアプローチは、静岡側から大井川に沿って東海フォレストのバスで椹島まで入り、ここから尾根を詰めていくルートであるが、東京起点の夏の道路事情もあって、身延側から転付峠を越えていくルートを採ることにした。この転付峠は、北アルプスに例えれば上高地へ入る際の徳本峠にあたる峠で、南アルプス南部の領域に入山する、古典的なルートでもある。
 

広河原の登山道入口

内河内川沿いの登山道
転付峠で一休み
●内河内川に沿って転付峠へ
  田代入口から林道を広河原まで入り、ここからいよいよ登山道となる。登山道入口には「至転付峠」の標識があり、近くに車を停めて、ここから内河内川に沿って歩き始めた。この川沿いの道は東京電力の巡視路にもなっており、よく整備された歩き易い道で、水音に涼を感じながら歩き進むことが出来た。所々「蜀の桟道」を思わせる箇所もあるが、危険な所は無い。川と別れ、縦走の重い荷物に喘ぎながら「つづら折」の坂を登りきると、「転付峠」に到着である。峠の手前には良い水場もあった。
  
●千丈岳で会った登山者に再会
  峠から二軒小屋に向かって出発しようとすると、下の方からチリンチリンと聞き覚えのある鈴の音が登ってきた。「どこかでお会いしましたっけ...」「先週、千丈岳にいらっしゃいました?」そう、ここで出会ったのは、前の週に千丈岳に登った時、大平山荘前で会話を交わした、日本縦断に挑戦している登山者だった。聞けばそれから、南アルプスを聖岳まで南下し、取って返して下部から富士山を越えて、駿河湾を目指すのだそうである。自分達が下界で生活していた一週間の間、ずっと山を歩きつづけていた事を考えると、「すごい」と言う驚嘆の念が湧き上がると同時に、これから先の道中の無事を、祈らずにはいられなかった。
転付峠付近から千枚岳を望む ●気持の良い二軒小屋幕営地
  峠から二軒小屋までは、内河内川から稼いだ600mの標高を、そっくりはき出してしまう一気の下りとなる。登山口から約6時間、1日目の幕営地「二軒小屋」へ到着した。二軒小屋周辺は、スイスアルプスの絵葉書に出てくるような景観が広がっている。盛夏であるにもかかわらず、人も少なく静かなキャンプ場であった。明日からの本格的な縦走に備えて、早く床に就くことにした。  

二軒小屋とキャンプ地
●標高差1500mの急登
  二軒小屋から千枚岳に向かっては、標高差1500mを登る急登の尾根道が続く。尾根の取り付きが近年付け変わり、現在はトンネルを越えて上流に掛けられた橋を渡り、尾根に取り付く様になっているが、私達が登った時には、放水路の直ぐ先の橋を渡り尾根に取り付いた。大抵の尾根道は、取り付いて1時間も登ると傾斜が緩くなるものだが、この千枚岳への東尾根は、登れども登れども傾斜が緩くならない。「高度を稼いでいる」のが実感できる登山道に、いい加減あきてきた頃、木々の間から転付峠から笊ヶ岳に至る稜線が望めるようになった。時折覗く展望を楽しみに、何とか千枚岳の肩まで到達、花畑の中を下って2日目の幕営地「千枚小屋」へと向かうことにした。  

千枚岳を望む

縦走路で出会った雷鳥の親子
●悪沢岳を越えて赤石岳へ
  入山3日目、今日はいよいよ千枚岳から悪沢岳を越えて赤石岳迄の、標高3000mの稜線を辿る縦走である。森林限界を超えたこの稜線からは、南アルプスの大展望が望める...筈であったが、今日はあいにくの曇空。大きな雲の塊が次々とやって来て、期待した展望を得る事は出来なかった。代わりに、雷鳥の親子が出迎えてくれた。最近は人間が苛める事が無いのか、近寄っても逃げていかない。むしろ人気のある登山道周辺の方が、天敵から身を守るのに良いのであろうか。
  大聖寺平を越えて超えて小赤石に取り付く辺りで、漸く雲間から赤石岳が姿を現した。山塊が大きく重厚な感じのする山容である。曇り空のおかげで展望は得られなかったが、強い日差しも無かったおかげで、歩くのには快適な温度で、水も思った程は消費していない。昼食を取った荒川小屋で、水を満タンに補給した事もあって、今日は赤石山頂直下の避難小屋で泊る事にした。それに「3000mの稜線からの大展望を見ずに、山を下り難かった。」のである。
雲間から覗いた赤石岳

赤石山頂の日の出

日が射し始めた山頂にて

雲海に映る影赤石
●荘厳な日の出
  翌朝、早目に支度を整えた私達は、赤石山頂で日の出を待った。ひんやりとした空気が肌に冷たい。風も無い静寂な中、静かに日が昇ってくる。紫がかった天空にパッと光が射す瞬間、思わず「御来光」に手を合わせる。山肌が次第に色彩を帯びてくる。振り返ると、雲海に向かって「影赤石」が伸びていた。
  山頂で荘厳な「山の日の出」に立ち会った私達は、赤石南斜面の美しいカール地形を楽しみながら、赤石小屋を経由して大倉尾根を椹島へと下山した。

椹島登山基地
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